2013.03.24 名誉学長・千葉真一さんの開校宣言と共に「桜坂映画大学」が幕開け!
毎年恒例、桜坂映画大学の特別上映『仁義なき戦い 広島死闘篇』が桜坂劇場ホールAにて行われました。
本作は、日本ヤクザ組織の代理戦争でもある“広島ヤクザ戦争”の実態をテーマにした『仁義なき戦い』シリーズ第2作で、シリーズ中、最も人気があると言われている作品。組織に利用され、裏切られる男・山中正治(北大路欣也)と、対立する大友勝利(千葉真一)を中心に、闇の世界の男たちの悲哀を描き出した傑作です。

舞台にはまず、桜坂映画大学学長・藤井隆が登壇、そして『新・仁義なき戦いのテーマ』と共に、今回、名誉学長に就任した“JJ・サニー・チバ”こと、世界で活躍する千葉真一さんが登場! 会場が大きな拍手で包まれました。
「これはもう奇跡です!」と床にひれ伏しての藤井のお出迎えに、少々照れ気味の千葉さん。
すでに50~60回も来ているという沖縄について聞かれた千葉さんは、「沖縄は歴史的に琉球の時代から興味があって、沖縄を舞台に撮りたい映画が4~5本あります」と驚きの発言。「それはぜひ実現してほしいです!」と藤井も興奮気味に返します。

藤井が、芸能生活がすでに53年になるという千葉さんへ、長くモチベーションを保ち続ける秘訣を聞くと、「僕の座右の銘であり、大事にしている言葉が、“肉体は俳優の言葉”ということ。顔だけで表現するものではなくて、肉体・五体で表現できる、どんな演出家からの要望にも笑って応えられるような肉体を持っていることです」と、貴重な格言を教えてくれました。
真田広之さん、堤真一さんら、現在第一線で活躍する俳優を輩出してきたジャパンアクションクラブ(JAC)の創設者でもある千葉さんから、「未来のために、今後たくさんの人たちを育てていきたいと思っています。この学校(桜坂映画大学)からもぜひ!」と嬉しいお言葉が発せられ、だんだんと会場の熱が上がってきたところで、千葉真一名誉学長の開校宣言と共に桜坂映画大学が幕を開けました。

千葉さん降壇後は、『仁義なき戦い』大好き芸人のなだぎ武、バッファロー吾郎、椿鬼奴、ジャルジャルが登壇。
『仁義なき戦い』シリーズの大ファンで、作品は全部観ているというなだぎが、見どころを「今のヤクザ映画にはない泥臭さ。下品だけれどもリアルで生々しい、痛いものは痛い!という表現をぜひ観てほしい」と話し、今回はオーディオコメンタリーとして、登壇者が観客と共に映画を観ながらコメントするというスタイルで映画の上映がすすめられました。
登壇した芸人たちは「この作品を大きなスクリーンで観られるなんて! 臨場感がすごい~!」と終始大興奮。

大画面での上映が終わり、観客と登壇者の熱気がうずまく会場に、千葉さんが再び登場すると、今日一番の拍手と歓声が巻き起こりました。
芸人陣から「いや~! 大友(千葉さんの演じた役名)って男はサイテーでしたね~!」「こわいっ!」「寒気しましたわ!」と、口々に言われまくる千葉さん。

そして、この作品のオファーが来たときの話として、「台本が来たとき、とてもできない、自分は無理だと断りました」と衝撃発言も飛び出しました。
「はじめは(北大路欣也さんの演じた)山中の役でオファーされていたんだよ。せりふも全部覚えたのに、クランクイン10日前になって、プロデューサーたちが全員やってきて“役を替えてくれ”って。もちろん無理だ!って答えました」と裏話を明かしてくれました。
「少し考えて、ふと思ったんだ。これは深作欣二監督の陰謀じゃないか?って。最初にオファーを受けた山中は僕が以前にやったことがあるような役だから、今度は狂気に満ちた大友の役でと思ってるんじゃないかと。凄まじい監督だからね、深作監督は。よ~し、だったら面白い!! 監督がそう思って大友役を持ってきたんだったらやってやる!!と受けたんだよ」と深作監督との深いつながりが分かるエピソードを披露してくれました。
クランクインまでにイチからせりふを覚えなおしたという千葉さん。
それまでになかった役柄で、難しかったという大友の役作りとして、「今まで何百本も作品を撮ってきたけど、“千葉真一を辞める”ことにしたんです」との言葉に、芸人陣からため息が。
「オレの恥部、恥ずかしい部分、それを全部やってみたんだ。これまでの千葉真一ではないことを。声のトーンも上げてせりふを言って、録音して聞いてみたりしたよ」
全体を通してだらしのない表情や動きをする大友について、「動けない役者は動けない役はできません。動ける役者だからこそ、だらしのない、動けない役ができるんです」と役者魂を披露。

さらにその後は深作監督の演出方法についても語ってくれました。
「監督は(自分が持っている)イメージは表に出さない。まず役者にやらせるんです。役者自身がぶつかってくるのが大好きな監督でした。監督は『役者の方が面白いもの持ってくるから、俺はそれをもらっているだけ』と言っていました」。
役になりきった千葉さんがとっさのアドリブで演技をした際も、深作監督は「おもしろい!」と親指を立ててグッドポーズをくれたとのこと。
そんな巨匠・深作監督が、千葉さんにとっては“安心してあずけられる、一番やりやすい監督”だったそうです。
そして千葉さんは、この大友役を演じてからいろいろなキャラクターに興味を持つようになり、おもしろそうな役は引き受ける“やりたがり”になった、大きな転機となる役だったということです。

芸人陣も観客も、完全に“千葉真一ワールド”にはまったまま、会場が一体となった時間でした。