シアター2で金子修介監督の映画「ジェリー・フィッシュ」が上映され、終了後、舞台挨拶が行われました。
「ジェリー・フィッシュ」の原作は雛倉さりえさんが16歳の時に発表した同名小説。思春期の少女2人の、繊細で残酷、嫉妬や純粋な気持ちが入り混じった“禁断の関係”が描かれています。それを金子監督が艶めかしくも温かいタッチで映画化した作品です。会場は外国人を含め沢山の観客でぎっしり。その約3分の1が女性で占められていました。
舞台あいさつには、主演の大谷澪さん(宮下夕紀役)、同じく主演の花井瑠美さん(篠原叶子役)、ガレッジセールの川田広樹、金子修介監督が登場。映画に込めた思いなどを赤裸々に語ったものになりました。
まず、沖縄国際映画祭に参加してみての感想を聞かれ、大谷さんは「去年は川田さんが主演の作品でヒロインを演じたが、映画祭には別の仕事で来られなかった。だから今年はぜひ来たいという気持ちが強く、レッドカーペットも歩くことができた。去年の悔しさもあり嬉しい」、花井さんは「撮影後まで映画祭に出ることは知らなかった。これまで沢山の人の前で歩いたり話したりすることが無かったので、心臓が飛び出そう。この映画祭でデビューできたのは感謝の気持ちでいっぱい」とコメント。
続けて川田は「初めての経験だらけ。いっぺーちむどんどん(とっても胸がドキドキ)したよ~。実は去年、大谷さんと共演した映画でレッドカーペット歩けると思ったら、なぜか紅芋をいっぱい渡されて歩かされた。相方(ゴリ)が紅芋大使やっているので。今年は出演者として歩けて嬉しい」と笑いを誘います。金子監督は「これまでも映画祭で上映するという話しが持ち上がっていたが実現せず、今回初めて参加できた。沖縄は家族旅行で来たり、30年前に森田芳光さんの助監督をやっていたとき、薬師丸ひろ子さんの映画『メイン・テーマ』の撮影を沖縄でやった。本当はもっと沖縄にいたい」と話しました。
次の質問は“濡れ場が多いこの映画に出演依頼が来た時の気持ちは?”というもの。これに対し大谷さんは「主演だけど裸だよ、と言われたが、裸になることの抵抗は全くなかった。自分が役者をやっていく中で、通る道だと思った。やりたいです、と事務所の社長に言ったら、そんな即答でいいの?と言われた」、花井さんは「3歳から21歳まで本格的に新体操をやっていたが、ケガで半身不随状態なった。その時にたくさんの映画を観て助けてもらい、女優をやりたいと思った。それでオーディションを受けて、初めて通ったのがこの映画。台本読んで、おー、すごい!女優やる以上、裸がなんだ!と思った。脱いで伝わるものがあるならやるべき。初めてなのに監督が選んでくれたことに感謝している」とコメント。
川田はずばり一言「率直に、ドッキリだと思った」と話し、会場を笑いの渦に。「僕に濡れ場なんて来るわけ無いと思ったが、台本読んだら本当だった。僕が一番ビビってたが、やってよかった」とコメントしています。
金子監督は、原作を読んだ時の感想を聞かれ「非常に短い女子高生二人だけの物語。純粋なものを描いているが、映画にするに当たっては立体化しないといけないので、それぞれのリアルな人生を多角的に捉えて物語を構成した。16歳の女子高生が書いただけあて、気持ちに嘘がない」と答えました。
さらに金子監督は“女性を描くことで一番大事なこと”について「好きになること。僕は直接触れられないので、写ってる二人を好きになるというのが重要だ。この作品では、大谷さんと花井さんが役になりきっていたので、それを撮るだけだった」と話すと、観客からは拍手が起こります。
続いての“撮影期間中、大変だったことは?”という質問に対して、大谷さんは「最終日に濡れ場シーンを全部撮影したのだが、なんと27時間。夜なのに明るくして昼間のシーンを撮ったりと、アタマがパンパンになり、もうバスタオルがベローンとなってしまうほど。メイキング回ってなくてよかった」とエピソードを披露。花井さんも「やっぱり最終日が思い出。プロポーションを作るためその日は38時間ぐらい食事を取らなかった。逆に潜在能力なのか、集中力が高まり繊細になった。人間を超えている感じ」と話しました。
川田が「ビデオショップの店員役で、アダルトコーナーで濡れ場シーンを撮影したのだが、目の前は女性の裸、周りは360度アダルトビデオ。アタマがおかしくなるかと思った」と話すと、濡れ場シーンを演じた大谷さんは「川田さん、とにかく緊張していました。そのときはどうしてあげればいいかと・・・」と苦笑い。すると川田が「ああいう時は女性の方が強いんですね。ささっと脱いで“来い!”みたいな」と続けると、客席から笑いが起きました。
最後に一言ずつ促されると、舞台上の全員が口をそろえて「たくさんの人に観て貰いたい」と発言。その理由として大谷さんは「色んな人に観られることで映画の中の二人が広がっていく」、花井さんは「魂を削って挑んだ。それが少しでも伝われば」、川田は「人が人を愛するのはピュアのものだ」、そして最後に金子監督が「出演者が体を張ってぶつけてくれた世界。疎かにできない」と、作品への思い入れを語り、締めくくりました。