沖縄国際映画祭のプログラムのひとつ『ウチナー映画~ロケ地巡りの旅~』では、沖縄をロケ地とした作品の上映とその作品にまつわるトークショーを楽しむことができます。
今回上映されたのは、幅広い年代から人気を集める山田洋次監督の男はつらいよシリーズ、1980年公開の第25作目『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』。
司会をつとめるのは、NPO法人シネマラボ突貫小僧の平良竜次さんと嘉手苅賢太さん。そしてスペシャルゲストとして、“二番目の女界のカリスマ”の異名を持つ出雲阿国が登場しました。
実はまだ『男はつらいよ』シリーズを一作品も見たことが無いという出雲阿国。「とってもいい作品だとよく聞くんですけど、ほら、寅さんって女からしたらいわゆるダメ男なんでしょう?私も“二番目の女”を名乗っているだけにいつもダメ男に引っかかってしまうので、ちょっと寅さんを避けてきた部分があるんですよ」と告白し、会場の笑いを誘いました。
そして作品の上映開始。「わたくし、生まれも育ちも東京葛飾柴又です。」で始まるおなじみの口上が流れると、会場の雰囲気は一気に寅さんワールドへと引き込まれました。
相変わらず放浪の旅を続けていた車寅次郎(渥美清さん)が病に倒れた松岡リリー(浅丘ルリ子さん)の看病のために沖縄を訪れ、回復したリリーと一緒に沖縄のとある漁村で同棲生活を送るというロマンチックなストーリー。
劇中、沖縄の風景がスクリーンに映し出されると、客席からはひそひそとささやく声が聴こえ、スクリーンを指差す姿が見られました。
上映終了後、再び平良さん、嘉手苅さん、出雲阿国が登場。
「初めての寅さんはどうでした?」という平良さんからの質問に、間髪入れず「好き!もうね、私寅さん大好き!」と興奮した様子で語る出雲阿国。上映前に危惧していたとおり、まんまと寅さんの魅力にはまってしまったようです。寅さんだけではなく、ヒロインであるリリーのイイ女っぷりにも感動したようで「私、芸名リリーに変えます」との宣言も飛び出しました。
続いて、作品に登場した沖縄のロケ地の現在の様子を、平良さんらNPO法人シネマラボ突貫小僧のメンバーが撮影してきた写真を使って紹介する、スライド上映とトークショーが始まりました。
劇中でリリーが入院していた古びた病院が現在はすっかり立派な大病院になっていたかと思えば、寅次郎が商売をしていた公設市場周辺の町並みは現在もあまり変わっていなかったり。「寅さんの後ろに映っているこの建物と看板は、現在も残っているんですよ」との平良さんの解説に、客席からも「(映画のシーンを見て)すぐどこか分かったよ」という年配の方の声が聴こえてきました。
また、リリーが退院後に静養のため寅さんと暮らしていた本部の町並みや、1975年に開催された沖縄国際海洋博覧会など、その年代の方にとっては懐かしい風景もたくさん登場しています。「リリーがもたれて寅さんを待っていた塀が現在もそのまま残っているんですよ」という平良さんの解説に、客席からも感嘆の声があがりました。
「映画にこんな楽しみ方があるとは思いませんでした!是非みなさんもロケ地をまわってみてください。私はリリーのコスプレしてまわります」とすっかり映画ロケ地巡りの魅力にはまってしまった様子の出雲阿国。
続けて「実は私、寅さんとリリーの下宿先の息子の高志君もタイプなんです。」と告白。「沖縄の男、最高ですね。このあと私と一緒にロケ地巡りをしてくれる方いませんか?・・・(静まり返る会場)・・・そうですよね、いませんよね。」と“二番目の女”らしい自虐ネタに会場からも大きな笑いと拍手が起こりました。「私の寅さんを待ちたいと思います!」という出雲阿国の力強い宣言とともにトークショーは大盛況のうち終了しました。
映画に登場するロケ地の当時と現在の風景を対比することで、その作品を何倍にも楽しめたり、また新たな魅力を発見できるという映画の楽しみ方を教えていただいた素敵なイベントとなりました。