シアター1で上映された『建築学概論』。同映画は韓国で観客400万人以上を動員し、“初恋ブーム”なる社会現象を巻き起こしたと言われています。
今回の映画祭の会場にもたくさんの観客が集まり、また日本にすっかり根付いた“韓流”人気もあってか、広い会場内には女性客の姿が目立ちました。
作品上映後に行われた舞台挨拶で司会の小林真樹子さんに紹介され壇上に現れたのは、イ・ヨンジュ監督とキム・キュンヘプロデューサー。
「沖縄国際映画祭にご招待いただきまして、本当に光栄に思います」とイ・ヨンジュ監督。「沖縄はテレビや雑誌などで見たことがあり、いつか必ず行きたいと思っていた場所でした。」とキム・キュンヘプロデューサーからそれぞれ挨拶があり、作品の余韻冷めらやぬ会場からはいっせいに大きな拍手が送られました。
「初恋を思い出して、胸がキュンキュンしてしまう本当にいい映画でしたね」とコメントする小林さんに、「そうそう」と頷く観客の姿も多く見られました。
沖縄国際映画祭の印象を尋ねられたイ・ヨンジュ監督は、「韓国でもこの映画祭の話をいろんな人から聞くことがあり、是非来てみたかったので今回は本当に嬉しいです。明るく活気にあふれた雰囲気で、素晴らしい作品ばかりが上映されていますね。また、野外のステージもとても素晴らしいです」と絶賛。
実はイ・ヨンジュ監督が『建築学概論』のシナリオを書き始めたのは2003年頃。この作品をデビュー作にしたかったという監督にとって、約10年越しの夢が叶うことになり「私にとっては片思いのような作品です」とコメントしました。
また、小林さんから韓国で作品が大ヒットした要員について尋ねられると、キム・キュンヘプロデューサーは「まず、監督が本当に素晴らしいシナリオを書いてくれたことです!」ときっぱり。これにはイ・ヨンジュ監督も思わず照れ笑いを浮かべていました。「そして、今韓国ではIT化がどんどん進んでいて、世界がめまぐるしく変わっています。変われば変わるほど、人々はアナログに対してノスタルジーを感じるのではないでしょうか。それから、誰もが共感できる“初恋”がテーマになっていることも作品がヒットした要員かもしれません」と続け、劇中の過去のシーンに流れる1900年代前半のノスタルジックな空気感が、観る人をなんともいえない気持ちにさせるのではと語りました。
作品の大きな魅力のひとつである俳優陣については「はじめは20歳と35歳で俳優を分けるつもりは無かったんです。でもなかなかうまくいかず、監督が発想の転換で別々のキャスティングにしたところ、とても良い作品になりました。なにより4人の俳優の感性が素晴らしかったのです」とキム・キュンヘプロデューサー。
イ・ヨンジュ監督も、20歳の頃のスンミン(イ・ジェフン)とソヨン(スジ)の初恋を象徴する歌として劇中に流れる、90年代のヒット曲【記憶の習作】という楽曲の発売年と、スジさんの生まれた年が同じだったことに運命的なものを感じ「(この役を演じるために)君が大人になるのを待っていたんだよ」とスジさんに伝えたそうです。
今年5月から日本での上映が予定されている『建築学概論』。「過去に未完成だった二人の“愛”のかたちが、家を建築することによって完成されていく様子に注目してください」とキム・キュンヘプロデューサー。
「2003年から書き始めたこの作品が、いつか日本で上映されたらいいなとずっと思っていました。今回このような形で映画祭で上映することができて、一番、幸せなハッピーエンドになりました。本当にありがとうございました!」というイ・ヨンジュ監督からの言葉に、会場からはこの日いちばん大きな拍手が送られました。