シアター3にて、特別上映《日本のコメディ部門》の『幕末太陽傳』が上映され、上映前の舞台あいさつに、山本晋也監督、髙平哲郎さん、ザ・プラン9・なだぎ武、そしてMCの出雲阿国が登場しました。
『幕末太陽傳』はフランキー堺主演のコメディで、古典落語の「居残り佐平次」ほか3つの落語をベースに、幕末の品川で口八丁手八丁で遊郭に居座り続ける、お調子者の男を描いた痛快喜劇の傑作です。
MCの出雲阿国に続いて、なだぎが登場。
よしもと屈指の映画通で、あらゆるジャンルの映画を観るというなだぎですが、なんとこの『幕末太陽傳』だけは観ていないそう。
続いて、山本晋也監督、高平哲郎さんが現れると、会場から大きな歓声と拍手が起こりました。
山本監督は「どうも、本物の山本晋也です」と冗談めかしてにっこり。
髙平さんは、《日本のコメディ部門》の全作品を選定したという、エンターテインメント界の重鎮です。
「映画に詳しいのなんのって、もうビョーキに近いね」と山本監督も独特の表現で称賛。
「この人は夜中の3時に電話してきて映画を作ろうって言う人ですから」と楽しそうに続けます。
赤塚不二夫さんがタモリさんを発掘し、当時は一緒に住んでいたという話しなど、映画界の大物の2人ならでは仰天エピソードがたくさん飛び出します。
話は山本監督が子ども時代を過ごした戦後の米軍統治下の話に。
「アーニー・パイル劇場の周りに行くと、そこの外国女性からいい匂いがしてね。僕ら“アメリカの匂い”なんて呼んで喜んでた。映画館がみんな焼けちゃって、渋谷にあった映画館なんて天井に穴が開いてるの、爆撃で。だから映画を観ながら星空眺めたりしてね」と当時の思い出を懐かしそうに語りました。
いよいよトークは『幕末太陽傳』の話題に。
山本監督が「フランキー堺のアクションがさ、すごいんだ。歩き方や階段の昇り方。あと羽織を空中に投げて、さっと着るんですよ」と、アクションを交えて話すと、それを見たなだぎが「ヤッターマンみたいですね」とおどけます。
続けて山本監督が「左幸子と南田洋子が遊女の役で、ケンカするシーンがあるんだけど、撮影所で(監督の)川島雄三が本当に2人に悪口を吹き込むの。あいつがこんなこと言ってたよって。そしたらその後のケンカがものすごいことになってね」と当時の型破りな撮影秘話を暴露。「デビューしたての石原裕次郎や小林旭が出てるんだよね」と髙平さん。すかさず山本監督が「ヘタクソでなー」と、大スターをこきおろすと、会場から笑い声が上がりました。
山本監督は「あの時代の細かい所作を観てほしい。幕末の時代に行けますから。何気ない所を観るとおもしろい」と、この映画の見どころを紹介します。
いよいよ上映時間が迫り、出雲阿国が「そろそろ上映時間です」と、声をかけますが「いやこれがまた…」とまだまだ話し足りない山本監督。
すかさずなだぎが「全然止まらへんがな!」と一喝すると、会場から大きな笑い声が起こりました。
最後に、なだぎが「こういう時代の喜劇は本当に貴重なので、監督がお話して下さった所も思い出しながら楽しんで頂けたらと思います」と締めくくり、温かい拍手の中ゲストの3人は会場を後にしました。