シアター2にて『ビッチ』の上映と舞台挨拶が行われました。
『ビッチ』は現代日本に生きる女性が“性”に対してどう向き合っているのかを追ったドキュメンタリー映画で、プライベートでも芸でもあまり“性”の話をすることを好まない椿鬼奴をレポーターに据え、女性ディレクターと共に取材を進めていくという形式になっています。熟年女性の性、BL、女性用性感マッサージなど、かなり際どい内容を取り上げた作品となっていました。
上映後、主演の椿鬼奴とロバート・秋山竜次、祖父江里奈監督が登場すると満席の会場は大きな拍手に包まれました。
椿鬼奴は「抵抗あるテーマの映画だけど、いま日本がこういう状態だということを世界に知らせたい」と話しました。
映画を撮ったきっかけについて問われた祖父江監督は「個人的に、女性用AVの売上げやパートナー以外との性行為など、日本の女性の“性”は積極的になっていると思っていたのだが、それなのに女性が下ネタを言うと周りからバッシングを受けるのはどうしてだろう?と思っていた。普段はテレビの仕事をしているが、映画ではテレビでできないことを撮ってやろうと思ってこの作品ができた」と話していました。
そしてキャスティングについて、「鬼奴が“性”の話題が苦手だと知っていたからあえて選んだ。実際一般の女性は、“性”の話題について苦手意識を持っている人がほとんど。一般の目線でインタビューができる」と話し、鬼奴の反応については「最初はすごく嫌がっているのがわかったし、私も嫌われていると思っていた。でも映画の後半、瀬戸内寂聴さんに会えることになって、『何を聞こうか?』と楽屋で話したとき、『私はこのままでいいのかな?』と、今まで自分の性欲について考えようとしなかった鬼奴が一歩前進したのを見て『よっしゃぁ!!』と思った」と、映画を通して椿鬼奴の心境の変化を語ってくれました。
椿鬼奴も撮影を通して変わったことは?と聞かれ、「男性芸人の下ネタも、言う事情があるんだろうって思えるようになった。“性”のサービスをする男性側にもいろいろな考え方があるんだと分かったから、一方的に嫌だって決めつけちゃいけないと思った。映画の話が来たとき、ホントに嫌だったけれど今は感謝している」と、視界が広がったことを話し、「もし友達と映画を観てくれるなら、見終わった後『あたし映画のあの人に似てる』とか、話し合ってくれるといいな」と、映画と自分を重ねて話し合ってほしいと述べていました。
また、劇中で漫画家の東陽片岡さんと熟女トークで盛り上がった秋山竜次は「1時間半もおじさん同士のトークでカメラを回されてて、ホントにこれでいいのか心配だった」と撮影時を振り返り、映画を機に椿鬼奴が“性”に積極的な女性に変わってきたかとの問いに「いや、全く変わらないですね。でも、ずっと同期でやってきたから、これを機にいきなりエロくなられても困る。徐々にエロくなってくれればいいんじゃないですかね」答えると、椿鬼奴から「でも私、今日はパープルのアイシャドウ入れてきたんだよ」という返答に会場のあちこちから笑い声が聞こえてきました。
祖父江監督は「女性はもちろん、男性も映画を観て、妻や彼女はこんなことを考えているんだと知って、危機感を持ってほしい」と意味深な言葉で挨拶を締めくくりました。
舞台挨拶の後、椿鬼奴とロバート秋山の二人は報道陣に対して行われた会見に出席しました。映画について椿鬼奴が「上映会のとき会場に子どもがいて罪悪感を覚えた」と話したのに対し秋山は「普段、女性は“性”に対してあまり何も言わないけれど、悩みもあっていろいろな意見があることを知って嬉しかった」と、“性”に対して積極的・消極的な二人の温度差が分かるような発言をしていました。けれども「もし“性”に対して悩んでいる女性がいたら、映画を観て参考にしてほしいと思った。中高年の“性”について雑誌で特集していることや女性用の性感マッサージ店があることなど、悩みを解決できる方法が分かると思うから」と、撮影前の椿鬼奴とは明らかに違う、“性”に対して前向きになった姿勢が受け取れました。
また、続編があるとしたら?との問いかけに、椿鬼奴は「まずは映画のノーカット版とか出してほしい。続編があるなら、今度は美輪明宏さんに会いたい」と話し、秋山は「今回はおじさん同士の対談だったから、次は宝くじ売り場の熟女と売り場の箱の中で対談したい」と、妄想ワールド全開で答えていました。